Act.120:
「それはほんの、ささいな事」
「フィオルンはどう思う?」
「次の段階への進化とか、そういう難しい事はわからないけれど、ただ、当たり前の日々を、当たり前に暮らしていけたらいいんじゃないかな?」
彼女はいつものように、穏やかな笑顔でそう告げた。機械化されたというのに、その顔は相変わらずだ。最近、見慣れた。
「ゴリラはどう思う?」
「メシ食って寝て、メシ食って寝て、メシ食って寝て、メシ食って───。」
「ああ、ゴメン。やっぱりいいや。」
彼は相変わらずだった。もう何も言うまい。これ終わったらマクナに発送しよう。
「メリアはどう思う?」
「同じ世界を望んでいても、それでも私たちは少しづつ変わっていく。昨日と同じ自分はそこにいないし、未来がどうなるかもわからない。」
ですよねー。さすがはメリアたんだ。ヒロインは言う事が違うね。
「メシ食って寝て、メシ食って寝て、メシ食って───。」
「いやもう、聞いてないから。」
…最後の最後までこんな扱いなのは仕方がないけれど…、あれ? そういえば一人飛ばしたような気がするな? まあ、薄いからどうでもいいか。元々、居ても喋らないし。
「リキさん、アンタどう思うんだい?」
「俺もメリアの嬢ちゃんと同じだ。毎日が同じでないからこそ、次の戦いを楽しみにしていられる。そう思うも。」
「帰ったら奥さんと喧嘩しないでくださいよ?」
「おいおい、かかあのネタはナシだぜ。」
「ダンちゃん、どうよ?」
「未来は分からない事が不安でもある。だが、それで努力し前に進む事を進化と呼ぶのなら、俺達はいつだって進化してる。」
「劇的な変化なんか、望まないよ───。」
「メシ食って寝て、メシ食って寝て、メシ食って───。」
お前は食っちゃ寝してるとブタになるぞ。それは退化だろ。進化じゃねえ。
そうか───。
仲間達が答えをくれた。シュルク自身がそうであってほしいという願いは、彼らが言葉にしてくれた。
彼は世界を創世する事ができるとしても、それを停滞でもなく、急激でもないものへと流れていくようにと願っている。
だから、僕は決めない。
未来は個人で決めるべきではなく、一人一人がその手で生み出していくべきだから。
新しくあり、古くもある世界を、歩くような速さでゆっくりと、進化していく事を願うから。
そして世界は、元のあるべき広大な大地を持つ惑星へと形づくられていく。
世界創世の物語は、ここに幕を閉じる…。
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